七瀬が巻き込まれてひどい目に遭っていくところを魅力的に書きたかった。
『トリック』の秋葉原人役でもおなじみのイケテツこと池田鉄洋さんが、脚本家として『家族八景』に参加。汚い大家族に翻弄される七瀬をドタバタコメディ調に描いたと言う池田さん。
三話目にして早くも新たな七瀬像の登場です!
――ズバリ、第三話『澱の呪縛』の見どころは?
七瀬のお風呂シーンが2回出て来るところです!(笑)。
毎回、入浴シーンがあるのがポイントのひとつなんですが、僕はあえて2回入れてみました。〈シャワーを浴びながら○○!〉というト書きを書いているんです。
……と言いながら、それが実際映像になっているのか、僕はまだ知らなくて。台本に書いても撮影で変わってしまうことは、よくあることなので。果たして残っているのかお楽しみください(笑)。
というのは、まあ、冗談として、第三話にして七瀬の違う面が見えるというところもお楽しみ頂きたい点です。
一、二話ではクールなイメージの七瀬ですが、三話では大家族に巻き込まれて、ひと味違う一面を見せてくれます。
木南晴夏さんが今まで演じてきた役柄の中でも新鮮なものになれば、と願って書かせていただきました。『20世紀少年』の小泉響子や『勇者ヨシヒコと魔王の城』のムラサキは積極的に感情も出すしどんどん行動していく役でしたし、『犬飼さんちの犬』ではクールな役柄でした。熱くてもクールでも自分の確固たる意思に基づいて動いていく役。今回、おこがましくも木南さんの新たな魅力を拝見したいと、『澱の呪縛』では、本人が思いがけないところでひどい目に遭ってしまう、そんな脚本を書かせていただきました。一、二話では家族を追い込んでいった七瀬が、神波家では逆にどんどん追い込まれていくところが見どころだと思います。
木南さんの演技はいつも素晴らしいので、今回も見事に演じてくださっていると期待しています。
最初の頃、神波家に来た時、犬にとびかかられて顔をベロベロ舐められるという僕の中での“セクシーシーン”も書いたのですが、動物は大変、と実現出来ませんでした。非常に残念です(笑)。
――名作『家族八景』を脚本家するにあたり、大事にした作品の魅力は?
私、筒井康隆先生のファンでして、特に『霊長類、南へ』や『俗物図鑑』が好きなんです。性に関する話も多いですよね。ふだんは気取っているけれど、人間だって一皮むけばケモノなんだっていうあけすけな感じが気持ちいいです。
『澱の呪縛』は『家族八景』の中でとくに好きなエピソードでした。思春期の性の汚さが描かれていて、脚本家するのがおもしろそうだなって。ただ、映像化するにあたって部屋の汚い描写はやや控えめになっています。汚い下着とかティッシュペーパーとは映像的にちょっと……(笑)。そういう制約の中、台本に言葉として書かないでどれだけ原作の雰囲気が残せるかはチャレンジでしたね。
また、原作は文学的な表現も多いですし、心の声もキツイ言い方が多いのですが、ドタバタコメディ調に仕上げたくて、少しマイルドになっています。
それと、大家族のキャラを使ってかなり遊んでしまっています。僕はやっぱりコントっぽい芝居を書いている脚本家なので、ついついそっち寄りになってしまうのかもしれません。
伝え聞いた話ですが、堤監督が荒編(荒く編集したもの)を見て「おもしろい」と言ってくださったとか。真偽の程は定かではありませんが、本当だったらうれしいですね。私が書いたギャグをも含めておもしろがって頂けるのは『トリック』参加者として光栄です。
――劇作家の方達との各話競作的な色合いもありますね。
前田司郎さん、江本純子さん、上田誠さんは共に小劇場で活動している方々ですが、彼らは僕よりずっと前から戯曲を書いてらっしゃる、ある意味先輩です。僕は自分の劇団の作、演出をやるようになってまだ8年ほどなので、彼らの中に僕が入っていいのか?とプレッシャーもありましたが、ちょっと負けたくない気持ちも、正直あります(笑)。皆さんも、そう思ってるんじゃないですかね?
後になるほどハードルが上がってくる気がするので僕は前半でよかったです(笑)。
――最後にもう一度メッセージを。
コメディとして気軽に楽しんでいただければ嬉しいです。木南さんファンも、七瀬ファンも、沢山の方がごらんになると思うんですが、僕なりにフェチっぽいセクシーさをふんだんに盛り込みました。巻き込まれてひどい目にあっていくヒロインの魅力は、お好きな人にはたまらないと思います(笑)。
[プロフィール]
池田鉄洋 Tetsuhiro Ikeda1970年生まれ。1993年、劇団「猫のホテル」に入団。「イケテツ」という愛称で人気を博す。
ドラマ『トリック新作スペシャル』『医龍』などに出演したことで、その特異なキャラクターが全国区で注目される。
2004年、コントユニット「表現・さわやか」を立ち上げ、作家、演出家として活動をはじめる。
初めて映画脚本を担当した作品『行け!男子高校演劇部』のDVDが3月2日発売となる。