四話は、女性のハードボイルドみたいなかっこいい話です。
個性的な脚本家が集結した『家族八景』の中で、唯一の女性作家・江本純子が描くのは、永遠の若さを追い求める女性の物語。
江本が熱情と笑いをふんだんに盛り込んで描いた陽子に七瀬はどんどん影響されていく。どうなる、七瀬!?
――『青春讃歌』を脚本化する時、大事にされた部分を教えてください。
原作ですと三話目ですよね。一話の『無風地帯』、二話の『澱の呪縛』(原作の順番ではこうなっている。『水蜜桃』は四話)を読むと、シニカルではあるけれど家庭内の恥部を暴いたおもしろい短編という印象でしたが、三話めの『青春讃歌』でとてもショッキングな展開があるんですよね。
七瀬がこれまで体験したことのないことが起きて、その後もヘヴィーな話が出てきて、どんどんおもしろくなっていくんです。これはキツい、残酷だ……と思う話もある中で『青春讃歌』は共感できる部分がみつかったので楽しく書けました。
陽子の若くいたいという気持ちは私も常々考えることなんです。
というか、たいていの女性は考えて実行していると思います。
例えば、知り合いの40歳の女性が、めちゃめちゃ美容に気をつけていて、33歳の私より若く見られるんですよ。
その人は陽子のように欲望は強くないですが、年齢のことはすごく気にしていて、なにかあるごとに「もう40だ、初老だ初老だ」って言う(笑)。
私も、若くいたいとは思うけれど、老いについて考え出したら、これからずっと考えることになるでしょう。人間は老いていくものだから。若かった頃を振り返っても若さについて考え過ぎても仕方ないと思うんですよ。
つまり、老いに対する恐怖と闘うしか方法はないんですよ。
陽子も、老いに対する恐怖を感じているのではなく、考えてない。若作りじゃない。自分は若いと思ってるんです。
そういう彼女の感覚を「かっこよく」感じてもらえるように書いたつもりです。
男の方は、陽子の気持ちを怪物的な若さへの執着と思う方もいるみたいなんですけれど、原作も「かっこいい」つもりで書いてあると私は思うんですけどね。
――陽子のかっこいい台詞もありますし、おもしろい台詞もあります。江本さん特有の言葉のセンスですね。
クライマックスの陽子は最高にかっこよく撮って頂いているといいなあと思います。ギャグに関しては、私が映像の脚本を書く時、だいたいカットになるのはギャグなんですよ。わからないって。
演出家の方から質問されるのもたいていギャグのニュアンスなんです。
――ええ、そうなんですかー。
でも今回はあえてそういうわかりにくいギャグを入れていきました、どうせカットになるなら書いてしまおうと(笑)。結果採用不採用は半々で、比較的わかりやすいものが生き残りました。
赤いTバックのエピソードが出てきますが、なんかすごいいやらしいト書きを書いたんですけど書き直しになりました(笑)。
――このシリーズの脚本家の個性は心の声に出ている気がします。
私は自分の作品だと台詞が割とストレートで、裏読みする必要がないんですね(笑)。『家族八景』の心の台詞は私にとっての表の台詞みたいなものです。
そう思うと表の台詞と裏の台詞は思い切ってもっと変えてもよかったかもしれません。
――そういえば饒舌な台詞を書く作家さんが集まっています。それが心の声として効果を成した気がします。
他にご苦労された点は?
最初、この作品がワンシチュエーションドラマだってわかってなくて、ロケシーンばかり書いていたんです(笑)。陽子の外出先のことを。
でもさすがに、ワンシーン、2シーンはロケありかと思ったのですが、全く室内だって聞いて驚きました。――2日間で一話撮ってますから外に出てる時間はないんですよね。
え、たった2日!? こわッ! ああ、それはきついですね(笑)。でも、陽子さんは車に乗るシーンが重要なのでそこだけは書きました。
――四話目にして初めてロケがありました。
ハハハ。あと、心の声をすべて木南さんがおやりになると聞いていたのですが、男の人の声までも?ってそのイメージはなかなか想像がつかなくて。寿郎のラストの台詞は、女の子が言うのは大変かもと思って若干和らげたところもあります。実は私の中では三船敏郎さんが話しているようなイメージで書いているんですよ(笑)。
ちなみに木南さんについては……お会いしたことはないのですが、打ち上げに出席できなかった私にホリプロさんからスタッフTシャツを送ってくださって、そこに木南さんからの直筆のメッセージもついていたんです。
四話でおもしろかった台詞について書いてありました。木南さん、いい方ですね~。
――では、四話放送を前にして、視聴者の方にメッセージをお願いします。
一~三話とは展開が変わっているので四話から見て頂いても大丈夫と思います。とくに四話は女性のハードボイルドみたいな感じが他の作品とは違っているんじゃないかな。
そうそう、三話までは、なんだかんだ言っても「家族」の話なんですが『青春讃歌』は個人の生き方の話になっていると思うんです。 他の家族みたいに家族関係を保つためにグチャグチャになってしまうのではなく、他人は関係ない、自分はこう生きる!という陽子が抜群に好きです。
[プロフィール]
江本純子 Junko Emoto1978年生まれ。2000年、劇団毛皮族を旗揚げ、主宰、劇作家、脚本家、俳優として活躍。
猥雑で華やかな世界観を描き、レビューなども盛り込んだ見せ方を得意とする。
CDや小説も発表している他「財団、江本純子」としての活動も行う。
映画の脚本に『非女子図鑑 魁!!みっちゃん』(09)がある。