脚本:佐藤二朗 演出:堤幸彦
桐生家は家長・勝美、妻・照子、長男、次男、長男の嫁と息子の6人家族。彼らの心は頭部に花が咲くというほのぼのしたビジュアルだったが、唯一の悪意は勝美に集中していた。
勝美は2年前に定年退職後ずっと家でブラブラし続けている。その様子が家族にはうっとおしくてならないようだ。
夕食のスキヤキでは肉をほとんど食べさせてもらえない。家族旅行に誘われない。妻にはセックスを拒まれる……などなど散々な仕打ちを受けている勝美に七瀬はつい同情して何かと優しく接するようになっていった。
それが間違いの元だった。勝美は七瀬に瑞々しい水蜜桃のイメージを重ね、甘い果実を貪るように彼女を抱けば若さを取り戻せると妄想を抱きはじめたのだ。
長男親子が旅行に出掛けた夜、勝美はとうとう夜ばいをかけてきた。貞操を守るため七瀬は勝美に向かって、彼の心を読み上げる。驚く勝美を七瀬は容赦なく追いつめていく。
驚きは恐怖へと変わり、ついには勝美は精神崩壊を起こしてしまった。
皮肉なことに、子供のようになってしまった勝美に照子は「かわいいわね」といつになく優しく接するのだった。
桐生勝美(57歳)
桐生家の家長。定年退職してから二年、終日家の中をウロウロしている。 |
桐生照子(59歳)
勝美の妻。性生活には全く興味をなくしている。不眠症。 |
桐生竜一(31歳)
長男。美人の妻とかわいい子供をもち、まあまあ満たされている。 |
桐生綾子(29歳)
竜一の妻。勝美をうとましく思っている。 |
桐生忠二(17歳)
次男。家族には高校の柔道部に所属していると言っているが……。 |
桐生 彰(7歳)
竜一、綾子の息子。「歯、磨きたい!」が口癖。 |